私が持っている一番古いワイン本は
「ワイン大全(THE GREAT BOOK OF WINE)」
という中央書院から昭和49年に発行された本です。
ちなみに、限定1800部の内、第501番という手押しのスタンプが押されていて、大きさは
縦横30.5cm×26cm、厚さ6cm、465ページ
の決して持ち歩きはできないほど重く、当時は内容がチンプンカンプンで全く理解できませんでした。
久しぶりに日本のワイン市場の推移を調べてみようと思い本を開きました。
以下のような表が記載されていました。
~昭和45年果実酒の用途別出荷数量(主要メーカー10社)~
<45年の出荷量割合>
大衆ワイン:793キロリットル(19.2%)
クッキングワイン:1,022キロリットル(24.8%)
テーブルワイン:2,308キロリットル(56.0%)
合計:4.123キロリットル(100%)
数字はさておき、大衆ワイン、クッキングワイン、テーブルワインという区分けは現在では耳にしない分け方です。
文中を読むとこの区分けの仕方がわかります。
古くからワインの消費量全国一位だった山梨県がトップの座をおり、東京都が一位になったのが昭和46年です。
そのことについて文中では
「この現象はワインが従来考えられていた大衆ワイン的な域を脱して、消費者が高級なテーブルワインにその思考を向けてきたことを意味するものであって、日本のワインにとって極めて重要な需要形態の変化であるといわなければならない。」
と説明されています。
山梨県などのワイン生産地で日常的に飲まれていた地元消費型を大衆ワイン、現在、私たちが一般的に飲んでいるものをテーブルワインと呼び、テーブルワインは高級な位置づけとされていました。
「ぶどう栽培地では従来1.8リットル400~500円のワインが、日常生活に常に用いられ、また冠婚葬祭もほとんどワインで行われてきたのであるが、農家所得特に栽培者の所得の増大に伴って、次第に清酒やビールにとって代わられ、大衆ワインの需要が次第に減少し始めたのである。」
とも書いてあります。
当時は地元のワインよりも清酒やビールのほうが高級な飲み物だったということですね。
昭和46年(西暦1971年)から45年が経ち、当時成人ひとりあたり0.06リットルしか飲まれていなかったワインが、現在約3.5リットル飲まれています。
ワインの消費量の増加に加え、私たちが持つワインのイメージも大きく変化しています。
「昨日、大衆ワインじゃなくてテーブルワイン飲んじゃった。」
なんて会話はどこからも聞こえてこないのですから。
2020年の東京オリンピックに向けて、日本のワイン市場がどのように変わっていくのか、日本ワインの未来が楽しみです。
文:宮川文子