4月のワイン研究会のテーマは「ヴィンテージチャートへの考察」、ボルドーの赤ワインをテイスティングしました。
その中の1本、メドック地区3級格付け2010年シャトー・マルキ・ダレーム・ベッケール(Chateau Marquis d’Alesme-Becker)のアルコール度数が14.5度と一般的な赤ワインよりも高く、ボルドーというよりもアメリカやオーストラリアワインのような印象を受けました。
その他の教材ワインもすべてボルドー格付けだったのですが、アルコール度数はすべて13.5度、アルコール1%の差で印象がかなり違うものだとあらためて感じました。
数十年前の赤ワインはアルコール度数が12%程度のものがほとんどでした。
現在では13%未満のワインと出会うことは少なくなり、押しなべて14度前後、15度以上も珍しくありません。
オーストラリアワイン研究所(Australian Wine Research Institute : AWRI)の調査では1984年から赤ワインのアルコール度数が着実に上昇していると発表されています。
2002年ヴィンテージの調査では、平均アルコール度数が14%を超えていて赤の四分の一は14.8~16.5%だったそうです。
アルコール度数の高いワインが生産される理由については、地球温暖化の影響や意図的な醸造過程の操作など議論が分かれるところですが、ちまたでは評論家の高得点を獲得するために高アルコールの濃縮されたワインを造る生産者がいるといわれています。
12年前、サンテミリオンのシャトー・パヴィをめぐって、世界的なワイン評論家ロバート・パーカー氏とジャンシス・ロビンソン氏の間で大きく評価が異なり論争が起きました。
2004年4月、2003年のシャトー・パヴィはまだ樽の中でしたが、テイスティング時に両者の間で激しいやりとりが交わされたそうです。
このワインに対して、ロバート・パーカー氏は95-100点をつけ「リッチでミネラルを感じ、骨格がしっかりしていて高貴なワイン」とコメントしています。
ジャンシス・ロビンソン氏は20点満点中12点をつけ「強烈な爆弾のような味わい、生産地の風土や伝統が感じられず、食事との相性などとはまったく無縁のワイン。ボルドーのワインというより遅摘みのジンファンデルにより近い」という批判とも受け止められる評価を下しました。
どちらの評価が正しいのかは賛否両論あると思いますが、最近はリッチでボリュームのあるワインが好まれる傾向にあるのは確かです。
従来よりも高いアルコールや濃さのあるワインを目指し、評論家の支持を仰いで販売につなげようと考えることも理解できます。
単にアルコール度数だけを取り上げて言及するのはかなり短絡的ですが、「ワインを飲むときには料理ありき」と思っている私にとって、食事との相性抜群の「アルコール12%」のワインが少なくなっていることがとても残念でなりません。
とても興味深く読ませていただきました。いつもメルマガをありがとうございます。いつもとても勉強になっています。