仕事柄、自宅の本棚にはワインや料理関係の本が並んでいます。
その中でも料理研究家、故・辻静雄氏の本が大好きで繰り返し読んでいます。
『パリの居酒屋』柴田書店、『パリの料亭』柴田書店、『フランス料理の学び方』三洋出版貿易、『フランス料理の手帖』鎌倉書房、『ワインの本』婦人画報社、『エスコフィエ偉大なる料理人の生涯』同朋舎出版、『ブリア‐サヴァラン 美味礼賛を読む』岩波書店、その他、料理のレシピ本5冊も愛読書として大切にしています。
辻氏は大阪に辻調理師学校を開校したことで知られていますが、もともとは畑違いの新聞記者でした。
当時、日本にはあまり馴染みが無いフランス料理の研究に本格的に着手、日本でのフランス料理の教育と紹介活動が認められて、1972年にフランス政府から「最優秀職人章」の名誉章を外国人として初めて授与されました。
辻氏の著書には、フランスの星付きレストランやビストロ、著名な料理人、名物料理やその地方のワイン、そしてマナーや四方山話など、食べ歩きが趣味だった私にとって興味深い内容が満載でした。
1973年出版の『フランス料理の手帖』で紹介されているワインと料理の組み合わせは経験したいものばかりであこがれていました。
「エビのビスク(エビの殻でだしを取ったスープ)には1875年シェリー・アモンティリャード」
「仔羊のキャレ(背肉のステーキ)には1911年のクロ・ド・ヴージョ、サラダのあとにチーズ・スフレと考えるのであれば1911年のロマネ・コンティ」
「ビーフ・シチューにはクロ・ド・ヴージョかラ・ターシュ」
「鴨のオレンジ煮にはボルドーのサン・テミリオンの赤、ぜいたくを言えばシャトー・オーオンヌ、まけてシャトー・シュヴァル・ブラン」
「シャトー・マルゴーにエビ入りのオムレツのようにさらっとした軽い料理」
ワインを勉強し始めてから気が付いたこと。
年号はともかく、そうそう経験出来るワインではないということです。
ワインと料理の相性にロマネ・コンティが出てくることが今となっては信じられませんよね。
そして、この本の中で紹介されている辻氏が尊敬しているというアンドレ・シモン氏の言葉に感銘を受けたのですが、何回読み返しても良い言葉だといつも思います。
「われわれ一人一人異なった違った指紋を持っているように、われわれの楽しむ舌も違った味覚を持っている。その日の気分、年、国、人々皆違うのだから、その自分に合ったワインをさがすことこそ、真の生活の楽しみになるのではないか」
ちなみにアンドレ・シモン氏(1877.02.28 – 1970.09.05)はフランス人ですが、その人生の殆どをイギリスで過ごし、シャンパンなどワインに関する著作や商人として活躍、フランスのレジオンドヌール勲章と英国の英帝国勲爵士を受勲している人物です。
アンドレ・シモン氏のように教科書通りのワインと料理の組み合わせではなく、自由な発想でワインを楽しみたいものです。
「甲州古酒とフォワグラのテリーヌ意外と良いですよ」なんて、天国の辻静雄氏に言ってみたいな~。