プティ・ヴェルドの栽培地といえばフランスのボルドー地方が有名です。
カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロのような主役格ではなく、ボルドー系赤ワインに数%ブレンドされる補助品種。完熟すると果皮の色が濃くなり、渋み成分のタンニンが凝縮されてグッと深みがあるブドウになります。
ところが天候に左右されやすく、開花期の天候が不順だと結実がうまくいかず、果粒が未熟で青いままになってしまうことが多々あるそうです。
名前のプティ=小さい、ヴェルド=緑はそんな状態を表しているのですね。
さらに晩熟ということもあり、多くのワイン生産者は1960~70年代に植付けを断念、栽培面積は徐々に減少してしまいました。
その結果、フランスでの総栽培面積は1980年代後半には約300ヘクタールになってしまったそうです。
1990年代以降は地球温暖化の影響もあり少しずつ面積が増えて、2007年には約500ヘクタールまで回復しました。
近年、プティ・ヴェルドの注目度が高まり、メドック地区の格付けシャトーにブレンドされる比率が増えているようです。
プティ・ヴェルドの歴史を遡ってみると、カベルネ・ソーヴィニヨンよりも古いらしく18世紀の記録が見つかっています。
世界的なワイン収集家のミシェル=ジャック・シャスイユ氏(1941年生まれ)が所有するワインの中でプティ・ヴェルドが使用されている古酒を調べてみると、1899年ヴィンテージのシャトー・ラトゥールには1%、1870年と1847年ヴィンテージのシャトー・パルメには5%がブレンドされていました。
フランスとアメリカの代表的なワインを集めてブラインド・テイスティングをした1976年のパリ・テイスティングでは、アメリカがフランスの格付けワインに勝利したのはプティ・ヴェルドの栽培に成功したからだともいわれています。
ちなみに1976年のパリ・テイスティングの順位は以下の通りです。
アメリカのワインが1位になったことは改めて素晴らしいと感じます。
1位 Stag‘s Leap Wine Cellars Cabernet Sauvignon 1973
2位 Château Mouton-Rothschild 1970
3位 Château Haut-Brion 1970
4位 Château Montrose 1970
5位 Ridge Cabernet Sauvignon Monte Bello 1971
6位 Château Leoville-Las-Cases 1971
7位 Mayacamas Cabernet Sauvignon 1971
8位 Clos Du Val Cabernet Sauvignon 1972
9位 Heitz Cellars Cabernet Sauvignon Martha’s Vineyard 1970
10位 Freemark Abbey Cabernet Sauvignon 1969
そういえば、1位になったスタッグス・リープ ワイン・セラーズを訪問した時に、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロを使用したボルドーブレンドにプティ・ヴェルドを一滴入れると劇的に味が変わるという説明を聞いたことがありました。
最近、日本でもプティ・ヴェルドのブレンドや100%使用のワインをチラホラ見かけます。
是非、私の大好きな山梨の白百合醸造でもプティ・ヴェルド主体のワインを造ってほしいと願っています!