2013年に「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録され、世界中で和食への関心がますます高まっています。
ところが、ワイン好きの方々の中には和食との相性が気になる方もいらっしゃるようです。
特にワインセミナーでよくある質問が和食に欠かせない醤油とワインの相性です。
「お刺身やお鮨とワインは合いますか?」
「醤油がワインの味を邪魔しませんか?」
和食に限らず、料理は食材、調理法、味付けなど様々な要素から成り立っていますが、日本人に一番なじみ深い調味料の醤油との相性が気になるようです。
私が今まで出会った中で、醤油が嫌いな人はいませんが、何でも醤油をかけるという人は何人かいました。
確かに、味のバランスが悪い料理にちょっと醤油をかけるだけで意外と美味しくなったという経験が私にもあります。
実はこれ、醤油の持つ「緩衝能」のおかげだそうです。緩衝(かんしょう)とは二つのものの間に立って不和や衝突をやわらげること。
醤油はこの緩衝能が強く、酸性度の異なるものを美味しく感じる弱酸性に近づけるという力を持っています。
緩衝能効果で、酸味のあるワインと醤油の相性が良くなりそうですね。
また、肉や魚の生臭みを消すという消臭作用もあり、鯖や鰯など生臭みのある青魚の調理には欠かせない調味料です。
これは醤油に含まれる香りや色の成分メラノイジンなどが、素材の生臭みを覆いかくす役目をするからです。
日本料理の下拵えにある「しょうゆ洗い」は、この効果を利用したものです。
刺身に醤油をつけるのは、味だけでなく生臭みを消す大きな働きをしているのです。
相性とは関係ありませんが、殺菌力も強く、昔から魚や肉を浸して保存するために醤油が使われてきました。
ある実験では、醤油に食中毒菌の一定量を入れて室内に放置しておいたところ、早くて30分程度で菌が死滅したという報告がされています。
腸管出血性大腸菌o157でも増殖しないというデーターもあるそうです。
ワインにも殺菌力があるのでW効果が期待できるかもしれませんね。
健康を助ける力「抗腫瘍性」も認められていて、日々研究が進められています。
さて、醤油の最大の魅力といえば熱を加えた時の食欲をそそる香ばしさ。
これは熱によってアミノ酸と糖分が反応、メラノイジンなどの香ばしい成分が作り出されることによるものです。
余談ですが、先日、高校時代の同級生グループでBBQをしたのですが、醤油を塗った焼きおにぎりが美味しすぎて食べすぎちゃいました。
紙コップに入ったワインを片手に焼きおにぎり5個!
そして牛肉やらスペアリブやらをおなか一杯食べているので完全にカロリーオーバー。
食欲を増進させる醤油の加熱効果は要注意です(笑)
醤油には対比効果もあり、例えば、甘い煮豆の仕上げに少量加えると甘味が一層ひきたちます。
そして、醤油の中のグルタミン酸と、カツオ節の中のイノシン酸が働き合うと、和食に欠かせない旨味が作り出されます。
醤油には甘味、酸味、塩味、苦味、旨味の五原味が醸し出す奥深い味わいがあり、麹菌、酵母、乳酸菌などの微生物の働きによって生まれる複雑な香りもあります。
本醸造醤油に含まれる香りの成分は、リンゴやバラ、ヴァニラなど、現在発見されているものだけで約300種類あるそうです。
香りと味が楽しめる身近な調味料の醤油。
日本のブドウだけで造られた日本ワインとの相性を検証してみたくなりました。
ワインサロン フミエールの講座で「日本ワインと醤油の相性を検証する」というテーマの授業をやってみようかしら?!