ヴァン・ヌーヴォー(新酒)で世界的に有名になったボージョレ地区は、ブルゴーニュ地方の最南端に位置し、主に黒ブドウ品種の「ガメイ」から赤ワインを生産しています。
14世紀末のこと、ブルゴーニュ地方のブドウ畑が害虫の被害に遭いました。
畑を復活させるために害虫に耐性があるといわれていたガメイを植樹したのですが、なんと、当時のブルゴーニュ大公フィリップ・ル・アルディはガメイが大嫌い!
「劣悪で卑劣なガメイは引っこ抜け」と言ったかどうかはわかりませんが、ガメイを高貴なピノ・ノワールに植え変えるよう奨励したのです。
そして、ガメイはブルゴーニュ地方のはずれのボージョレ地区に追いやられてしまいました。
「はずれ」とか「追いやられた」というと悲観的な感じがしますが、ボージョレ地区はフランスの中でも広大なブドウ畑が広がる風光明媚な土地。
頬が赤く酒焼けした陽気な村人たち(私の勝手な想像です)が、新鮮なうちにグイグイ飲めるフレンドリーで楽しい赤ワインを農作物として造っていました。
まだまだ、ボージョレのワインが早出し物の新酒として、まともに取り上げられなかった時代は、フレッシュで果実味あふれるワインを樽に入れて販売していたそうです。
1950年以前の新酒は、瓶入りは無く、ましてや海外に輸出されることもありませんでした。
樽入りワインはリヨンやパリのビストロで水差しに移し替えられてサービスされたそうです。
ある時、ボルドー地方やブルゴーニュ地方の高級ワイン、特に古酒が大好きなワインファンの間で、新酒を飲むのが「粋」という風潮が広がりました。
そんなブームに押された一部の生産者は、いち早くワインを出荷しようと競い合うようになります。
個性が乏しくてもいい、品質なんて関係ない、とにかく早く、なんでもかんでも新酒として販売してしまおう、というワイン生産者としてあるまじき行為!
そして、解禁日が設けられることになりました。
実は解禁日は3回変更になっています。
最初は11月11日聖人「サン・マルタン」の日、
次に11月15日聖人「サン・タルベール」の日、
そして11月の第3木曜日に変更され、現在に至っています。
それにしても、ブドウを収穫、醸造、瓶詰を経て、成分の化学分析と味覚テストの審査をパス、海外でスムーズに販売できるように前倒しで出荷、大急ぎで世界中に輸出されるのですから、流通事情が悪い時代は大変だったと思います。
30年前から毎年、一生懸命働いたボージョレの人々をねぎらうお祭りが開催されています。
今年も11月14日から18日の5日間、「サンマルテル祭」というイベントが催されました。
シャンソン、ダンス、試飲会、テイスティング大会、花火など盛りだくさんのお祭りです。
ワイン付きの料理コース45ユーロも写真で見ただけなのですがとっても美味しそう!
特に、肉料理の「牛肉の串焼き・ボージョレワインを使ったマルシャンソース(Bœuf cuit à la broche et sa sauce marchand de vin de Beaujeu)」は食べてみたい!
マルシャン・ド・ヴァン(marchand de vin)は、「居酒屋」のこと。
エシャロット(小玉ネギに似ている野菜)と赤ワインとバターを使った爽やかな酸味がある綺麗な紫色のソースは、居酒屋で出される庶民の味?
私的な事ですが、新婚ホヤホヤの姪っ子夫婦が近々自宅に遊びに来ます。
そのときの料理とワインは、ソース・マルシャンド・ヴァンの牛肉の串焼きとボージョレ・ヌーヴォーにしようと考えています。
「ボージョレ・ヌーヴォーってもう流行らないよね」と言っていた30歳代の姪っ子夫婦に歴史があることを教えてあげたい。
でも「おばさん、うるさい」と言われない程度にしますね。
課外授業料は結婚祝い、無料にしておきます(笑)