fumifumi談義~ワインの思い出~

シャルドネは、私がワインを好きになった原点のブドウ品種。

ドメーヌ・ポチネ・アンポー(Domaine Potinet Ampeau)のムルソーを飲んだ時の感動が今でも忘れられません。

ブルゴーニュ地方のムルソー村に本拠地を置くポチネ・アンポーは蔵出し古酒が特徴のドメーヌ。セラーでゆっくり熟成、飲み頃を迎えたワインだけが出荷されます。

ワインの味わいは、時間の経過とともに美化されてしまうことが多々ありますが、1980年代中頃に飲んだ10数年経過のムルソーは黄金色に輝く神秘的な液体、トロリとした感触が口の中に広がり心地良かったことを覚えています。

この日から「良い熟成を経た」シャルドネの大ファンになり、ワインリストに10年経過くらいのワインがあると「飲みたい」という気持ちでいっぱいになってしまいます。

先日も飲食店で3種類提示されたシャルドネの中から、ドメーヌ・ド・ラ・プス・ドールのピュリニー・モンラッシェ1級畑ル・カイユレ(Domaine de la Pousse d’Or/Puligny Montrachet 1er Cru Le Cailleret)2007年ヴィンテージを選んでしまいました。
fumifumi談義~ワインの思い出~
理由は三つ。

熟成したシャルドネが好きなこと、

1級畑のカイユレは世界最高峰のシャルドネ「モンラッシェ」の畑と同じ標高・地続きであること、

そして、ドメーヌ・ド・ラ・プス・ドールが気になる造り手だったことです。

なぜ気になる造り手だったかというと、この造り手のドメーヌ名と畑名が不思議だったからです。

「Domaine de la Pousse d’Or」と「Clos de la Bousse d’Or」、ドメーヌ名と畑名が微妙に違う名称。

なぜ「Pousse」と「Bousse」なのだろう?

もしかしたら誤植?

調べてみると、もともとBousse d’Or(ブス・ドール)は由緒正しい伝統的な畑だったそうです。

ところが、1900年代初めに「黄金の新芽」を意味するPousse d’Or(プス・ドール) に変更されました。

その理由は、「Bousse」は辞書にも載っていない意味不明な単語だったからです。

ワイン法が確立されていない時代、畑名の変更は簡単にできたようです。

そして、ドメーヌ名も畑と同じ「Pousse d’Or」に改名されました。

ところが1967年、フランス政府が「例外を除きブドウ畑の名称をドメーヌ名にはできない」という法律を打ち出し、それが適用されてしまいました。そこで、昔の畑名「Bousse」に戻すことにしたそうです。

実はもうひとつドメーヌ・ド・ラ・プス・ドールには思い出があります。

1997年、西オーストラリアにあるサリタージュ(Salitage)というワイナリーを訪問しました。

オーナーのジョン・ホーガン氏は、シャルドネで世界的な名声を得ているルーウィン・エステートの一族。

ルーウィン・エステートと縁の深いアメリカのロバート・モンダヴィの指導下で経験を重ねワイナリーを設立したそうです。

サリタージュのセラードア(試飲直売所)にはブルゴーニュの畑の地図が貼ってありました。

その訳は、ホーガン氏がドメーヌ・ド・ラ・プス・ドールの株主兼共同経営者だったからです。

私が訪問した同年秋に共同経営者の方が急死したため、ドメーヌは売却されてしまいました。

ホーガン氏はとってもお茶目な方でした。

お目にかかった時の挨拶が流暢な日本語だったことをいつも思い出します。

「ホーガンはタリキホーガン(他力本願のこと)、よろしくお願いします。」思わずプッと笑ってしまいました。

ドメーヌ・ド・ラ・プス・ドールのワインをみかけるとホーガン氏の挨拶をいつも思い出してちょっと楽しい気分になります。

ワイン1本1本の思い出が、美味しかったり、楽しかったり、うれしかったり、もしかすると悲しかったり。

ワインは心のエッセンス。

きっと来年も素敵な出会いがあるはずです。


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