マグロは季節を問わず、いつでもどこでも購入できる身近な魚です。
我が家の食卓には1週間に3~4回マグロが登場します。
実はマグロは愛猫トラキチの大好物。
キッチンでマグロをお皿に盛り付けていると、「ミャッ」と鳴きながらクリクリの目で「ちょうだい」とうったえてきます。
「しょうがないな~」と言いながらマグロをトラキチ用の食器へ。甘やかしてはいけないと思いつつ、トラキチの嬉しそうな顔を見るのが楽しみになっています。
トラキチは赤身派なのでトロは一切食べません。
ちょっと贅沢をして中トロや大トロにしようかなと迷っていると、トラキチの顔がチラついてついつい赤身を買ってしまいます。
一般的にトロといえばマグロの脂の多い部分を指しますが、今やトロカツオ、トロサーモン、豚肉のトントロなど幅広く使われていますね。
トロの響きは旨い脂、高級なイメージです。
少し昔、マグロの脂の部分はトロとは言わず、アブラっぽいことから「アブ」と呼ばれていました。
もし名称が変わらなかったら「アブ握ってください」とお寿司屋さんで注文していたかも?
諸説ありますが、「トロ」の命名は大正7年創業の東京日本橋にある老舗鮨店「吉野鮨」で起こった、ある出来事がきっかけだったようです。
余談ですが、実は私、吉野鮨の近くにあったイタリアンレストランで10年間、店長として働いていました。
吉野鮨さんのお寿司は年に2回、一緒に働くスタッフとの暑気払いや忘年会の時に必ず注文していました。
ご近所なのでお寿司の引取りと桶の返却は私の役目。
お店に入るたびに「いつかカウンターで好きなものを頼んで食べたいな~」と思っていました。
夢はワサビたっぷりの大トロの握り!
いくらするのでしょう?高そうですよね。
ところが、冷凍冷蔵技術が発達していない時代、傷みやすかったマグロの脂身は赤身よりもずっと安かったそうです。
吉野鮨では出前用に脂身は使用せず、来店のお客様だけに出していました。
あるとき、毎日のようにお寿司を食べに来る商社マンの方が同僚の方を数人連れて来店されました。
マグロのトロの部分を「その霜降りのところ」とか、「腹側の脂の多いところ」とか、「ズルズルの脂っこいところ」などバラバラな名称で注文、そこで「口に入れるとトロッとするからトロにしては」という提案があり、全員一致で「トロ」という名前に決まったそうです。
トロの脂は融点が低い不飽和脂肪酸なので舌の上で溶けやすく、舌から脳にその美味しさが(人それぞれ好みは異なりますが)すぐに到達します。
脂の口どけ、舌触り、旨味、香りと4拍子揃ったトロは魅惑の味なのですね。(うちのトラキチは魅了されませんが)
我が家では1週間に何度もお刺身を食べるので、旬の野菜を3~4種類千切りにしてツマを作り、生姜やワサビなどの薬味をたっぷり準備するようにしています。
このサラダ的なツマとたっぷりの薬味がワインとの橋渡しの役割をしてくれるので、白でも赤でもロゼでも泡でも美味しくいただくことができます。
ツマにドレッシングをかけてカルパッチョ風にするのもオススメですよ。