Fumifumi談義~アクアヴィット~

Fumifumi談義~アクアヴィット~数年前から日本ソムリエ協会教本にスピリッツのアクアヴィット(Aquavit)が掲載されています。

本文6行150文字程度の説明で「スカンジナビア料理の前菜とともに良く冷やしてショットグラスで飲まれることが多い」と書かれてあります。

情報量が少ないので試験対策ではあまり重要ではないと判断しましたが、個人的には「いつかご当地料理を作ってショットグラスで飲んでみたい」と興味がわいています。


アクアヴィットの語源はラテン語のアクア・ヴィテ(Aqua-vitae)。

アクアは水、ヴィテは生命、「生命の水」です。

北欧諸国特産のお酒で主にノルウェー、デンマーク、スウェーデンで造られています。


ジャガイモを糖化(蒸す・煮る)して発酵、蒸留後にキャラウェイ、アニス、クミン、カルダモンなどのハーブやスパイスで香をつけます。

原料となるジャガイモは南米大陸のインカ帝国を征服したスペイン人によって16世紀にヨーロッパにもたらされました。

ということは、それ以前は造られていなかった?

15世紀の古い文献によるとヨーロッパからワインを輸入、蒸留して造っていたとか。

当時の原料はジャガイモではなくブドウだったのですね。

16世紀末になると穀物が使われるようになり、18世紀にはジャガイモが主原料となりました。


ノルウェーにリニア・アクアヴィットという銘柄があります。

リニアは赤道のこと、意味は「赤道のアクアヴィット」。

その昔、樽詰めしたアクアヴィットを船に積み、赤道を越える航海から戻ってくると風味が向上していることに気が付きました。

現在でもその製法を忠実に守り、5~10年のシェリーの古樽に詰めてオーストラリアまで航海させて製品化しています。

ラベルの裏には使用された船名や航海期間が記録されるそうです。


第二次世界大戦のときにノルウェーがナチスに占領されて故国に帰れなくなったアクアヴィット船がありました。

1939年12月にノルウェーの首都オスロで、その船に積まれたアクアヴィット。

ケープタウン経由でオーストラリアのメルボルンに3カ月後に到着します。

そのままエジプトのポートサイドに向かい、そのまま1941年11月まで貯蔵されました。

その後、爆撃にあいスエズに移動、1カ月後にやっとの思いでオーストラリアのフレマントルに到着します。

南アフリカのケープタウン経由で自国に戻る途中、幸いにもドイツ軍の攻撃を逃れ、1942年5月にイギリスのブリストルに到着できました。

2年もの航海の間に赤道を4回通ったことになります。

最長距離を旅したアクアヴィットは最高の味に育っていたそうです。


アクアヴィットは北欧でスメルゴスブードと呼ばれるバイキング形式の前菜に合わせるのが一般的です。

バター付きパン(smor)、チーズ(ost)、にしん(sill)、頭文字をとって前菜SOSが最低限あればアクアヴィットを楽しむことができるそうです。

冷蔵庫で良く冷やしたショットグラスにキンキンに冷えたアクアヴィットをナミナミついで、胸のあたりにグラスを持ち、一緒に飲む相手と目と目を合わせてから「スコール=乾杯」といって一息に飲むのが正式な飲み方。

飲み終わった空のグラスは胸の高さまで戻し相手と目を合わせるのを忘れずに。


今は緊急事態宣言発令中で飲食店ではお酒が飲めませんが、コロナが収束したらみんなで「スコール」したいですね。