先月11月19日の夕方から宵にかけて部分月食がありました。
月の直径の97%が地球の影に入る「ほぼ皆既月食」です。
私は自宅二階の部屋の電気を消して、窓から見える月を30分くらい眺めていました。
引き込まれるような月の動きと不思議な色。
月からパワーをもらったような錯覚に陥りました。
ブドウ栽培においても月の満ち欠けのリズムが重視される農法があります。
地球や宇宙のパワーを取り込み、土地や環境、植物の力を最大限に引き出すことを目指すビオディナミ(バイオダイナミックス)農法。
月が次第に満ちて満月になる時期は植物の生命力が増大するので、収穫は満月になる頃を見計らって行われます。
満月から新月になる期間は植物の生命力が弱まる時期で、樹勢が弱まるため剪定に絶好のタイミングになります。
ブドウ栽培だけではなく、伝統に従い、満月の日にワインをボトリングする生産者もいるそうですよ。
月を見上げて、今の満ち欠けの状況がブドウ畑やワイン造りにどんな影響を与えているのか、ついつい考えてしまいます。
そんな「月」と関係の深いワイン産地があります。
アメリカ・カリフォルニア州のソノマ群です。
ソノマの意味は「谷間を照らす月」。
ソノマ群はサンフランシスコ市街から車で北へ約1時間の距離に位置しています。
州の北沿岸部、西に太平洋、東は山や谷が多く複雑な地形、南にはサン・パブロ湾があります。湾から流れ込む霧で群全体がすっぽり包まれることも。
東西83Km、南北75Kmと山梨県とほぼ同じ面積で、現在550軒以上のワイナリーが存在しています。
ちなみに山梨県は90軒程度です。
19世紀初頭、アラスカやカナダ周辺に毛皮貿易で進出したロシアがカリフォルニアに南下してきました。
そして、ソノマ郡にフォート・ロス=ロシアの砦と呼ばれるロシア人の定住拠点が築かれたのです。
その場所に最初のブドウ樹が植えられました。
ソノマ群にあるワイン産地ロシアン・リヴァー・ヴァレーは「ロシアの川と谷」の意。
歴史を調べることでアメリカなのにロシアという名称になった理由がわかりました。
ソノマ群とナパ群、それぞれのワインの特徴を意識したことは無く、カリフォルニア州のワインとしてとらえてきました。
でも今は違います。
ナパは「太陽」、ソノマは「月」のイメージ。
太陽の光は人々の生活を育み、月の光は人々の心や身体を癒してくれます。
ホッとしたいとき、リラックスしたいときは、余計な力が入っていない穏やかなワインが良いかもしれませんね。