子供の頃、ドアの前に立って「ひらけ~ゴマ」、筆箱に向かって「ひらけゴマ!」、何気なく口にしていたフレーズ。
『アリババと40人の盗賊』の話の中に出てくる呪文です。
ある日、盗賊たちが盗んだ財宝を洞窟に隠しているところをアリババが偶然見てしまいます。洞窟の扉を開ける呪文は開けゴマ。
呪文を知ったアリババは財宝を手に入れて大金持ちになりました。
それを知ったお金持ちなのに欲ばりな兄カシムも財宝を盗みに洞窟に入ります。
ところが財宝に夢中になりすぎて呪文を忘れてしまったのです。
「小麦?ジャガイモ?りんご?なんだっけ?」。
洞窟に閉じ込められたカシムは戻ってきた盗賊に見つかってしまいました。
この物語の決め台詞の開けゴマは世界各国の言葉になっています。
原文のアラビア語はイフタフ・ヤー・シムシム(iftah ya simsim)、
フランス語訳はセサム・ウーヴル・トワ(sésame、ouvre-toi)、
中国語訳は芝麻開門(ヂーマーカイメン)、
ドイツ語訳はセサム・エフン・ディヒ(sesam öffne dich)、
イタリア語訳はアプリティ・セサモ(apriti sesamo)、
すべて「開け」と「ゴマ」の組み合わせです。
英語ではオープン・セサミ(open sesame)というのですが、これには別の意味があります。
それは「虎の巻」。
私たちの身近にある虎の巻は、教科書の解説や問題集の解答法などが書かれた参考書のことですが、もともとは古代中国で誕生した「六韜(りくとう)」と呼ばれる兵学指南の書物に由来します。
六韜とは6つの「文韜」「武韜」「龍韜」「虎韜」「豹韜」「犬韜」からなり、あらゆる状況を想定して、その具体的な対応策がまとめられているものです。
その中でも虎韜は最も実用的な書で、それが転じて、いざというときに頼りになる書物のことを虎の巻というようになったのだとか。
そしてセサミといえば、1969年から46年にわたり150カ国以上でテレビ放映されたアメリカの『セサミストリート』を思い出します。
日本語訳はゴマの道。
ユーモラスなモンスターや動物が平和に暮らす街として親しまれた番組名は開けゴマからヒントを得たそうですよ。
セサミには子供たちに新しい世界への扉を開いてあげたいという想いが込められています。
開けゴマの呪文でコロナの無い世界の扉が開いたらうれしいですね。
でも今は、コロナから自分を、そして大好きな人たちを守るために「感染症・虎の巻」でしっかり対策をしましょう。