アジロンダックは1852年にアメリカで交配育成された生食用の黒ブドウです。
第二次世界大戦直後まで山梨県で大量に栽培されていましたが、年々栽培量は減少、とうとう「幻のブドウ」といわれるようになってしまいました。
減少した理由は「脱粒」にあるとか。
脱粒とは、ブドウに限ったことではありませんが、成熟するにつれて実が本体から離れてバラバラに落ちてしまう性質のこと。
アジロンダックを流通させると実離れが激しく傷んでいると思われてしまう為、生食用としての需要がなくなってしまったそうです。
ちょっと専門的なお話になりますが、アジロンダックの学名は北米系種(アメリカ系)ヴィティス・ラブルスカといいます。
ワイン用のブドウとして広く知られているシャルドネやカベルネ・ソーヴィニヨンは欧・中東系種(ヨーロッパ系)ヴィティス・ヴィニフェラに分類されます。
ラブルスカ系のブドウを使ったワインには独特の香りがあり、その香をフォキシー・フレーヴァー(Foxy Flevor)、日本語では狐臭(こしゅう)と呼びます。
狐臭はグレープジュース、商品名になりますがファンタ・グレープのような甘く強い香りが特徴です。
狐はグレープジュースの臭い?
ワインの勉強を始めたばかりの頃、フォキシー・フレーヴァーはフォックスさんという人が発見した香りだと教えてもらったような記憶が残っています。
そもそも、アメリカではラブルスカ系のブドウのことを“fox grape”と呼んでいたことから、その香りを“foxy flavor”というようになったというのが有力説です。
そして調べれば調べるほど色々な説が浮上、ラブルスカ系のブドウの葉っぱの形がキツネの手や足先に似ているとか、葉っぱの裏側に生えている繊毛がキツネ色だとか、何が真実なのか混乱してきました。
それはさておき、実はアジロンダックの赤ワインがとても気になっています。
神秘的かつ個性的でふくよかさを感じるオリエンタルな香り、エキゾチックでなめらかな甘みとスパイシーな余韻。
独特な雰囲気を醸し出すアジロンダックと相性の良い料理は?
一緒にワインをテイスティングしたワインサロン フミエールの顧問が提案した料理は「北京ダック」。
ダックとダックだから?とチラッと思ったのですが、ダジャレでもなく、韻を踏んだわけでもなく、頭の中で妄想ペアリングをして思いついた料理です。
実際にあわせてみると目からウロコの最高のペアリング。
アジロンダックに甜面醤を使った甘いタレが、私の好みにピッタリでした。
ワインと料理が響き合った時の美味しさは格別ですね。幸せです!