世界一高価なスパイスといわれているサフランは、アヤメ科の多年草で観賞用としても親しまれているクロッカスの仲間です。
別名をサフランクロッカス、蕃紅花(ばんこうか)といいます。
ひとつの花に1本の先端が3つに分裂している長い雌しべがあり、それを乾燥させたものがスパイスのサフランになります。
雌しべは約17万本の花からたったの1kgしか採取できないのですが、花畑はサッカーコート2面ほど必要になります。
サッカーのフィールドの大きさは縦105m×横68m=0.7ha、その2倍の1.4ha。
ブルゴーニュ地方の偉大なワイン「ロマネ・コンティ」の畑が1.77haなので、ロマネ・コンティの畑で栽培したら約1.3kgのサフランが採取できる計算になります。
サフランは野生では繁殖できないため、人の手で球根から増やして栽培しなくてはなりません。
10月半ばから咲き始める花は、朝に咲き切った後すぐにしぼみ始めるので、迅速に丁寧に収穫できる熟練者が必要となります。
収穫できる量や人件費などを考えると高価になってしまうのは仕方ありません。
諸説ありますが歴史を紐解くと、ギリシャのエーゲ海最大の島「クレタ島」にサフランの原種があったとのこと。
クレタ島には数々の古代遺跡がありますが、その中のクノッソス宮殿の壁には女性がサフラン摘みをしている様子が描かれたフレスコ画があります。
当時から、サフランは薬用、香料、染料、そして料理などに幅広く利用されてきました。
お風呂にサフランを入れたという逸話が残っている歴史上の人物は、アレキサンダー大王、クレオパトラ、古代ローマ人など。
英雄アレキサンダー大王は戦闘での傷の治療のためにサフラン風呂に浸かり、絶世の美女クレオパトラもサフラン入り馬乳風呂で身体を磨き、さらにサフラン化粧水も使っていたそうです。
古代ローマ人はサフラン風呂でゆったりくつろぎ、食事時にサフラン入りワインを飲んでいたとか。
その他、衣類を染めたり、赤土・獣脂・蜜蝋などを混ぜて口紅を作ったり、卵白と混ぜ合わせて黄色の顔料にしたり、色々なものに利用されてきました。
14世紀にヨーロッパでまん延した感染症ペスト(黒死病)の特効薬とされたのもサフラン配合の薬でした。
ペストの解毒剤として処方されたそうです。
現代の研究では、サフランに含まれる抗酸化成分が健康に役立つ可能性があると示されています。
サフランに含まれている主成分はサフラナール、クロシン・クロセチン、ピクロクロシン。
サフラナールは睡眠の質を改善・ストレス軽減・記憶力アップ、黄色い天然色素成分βカロチンの仲間クロシン・クロセチンは眼精疲労改善・血流促進・睡眠障害改善・シミくすみ予防・疲労回復・大腸がん予防、苦味成分ピクロクロシンは記憶障害改善にと健康に良いことばかり。
さて、今夜はサフランを使った贅沢なブイヤベースにしようかなと思います。
でも、サフランの鮮やかで明るい黄色は、色を見るだけで血圧や脈拍数が上昇し体温も上がって食欲増進につながるそうなので、食べすぎ注意です。