友人とワインの話をしていた時にふっと話題にのぼった、ブルゴーニュ地方ヴォーヌ・ロマネ村の一級畑「レ・ゴーディショ」。
幻の一級畑といわれる、小さな、小さなブドウ畑のワインです。
「飲んだことある?」「あったかな?記憶にない」「レ・ゴーディショってヴォーヌ・ロマネ村のどこら辺にある畑だっけ?」「ラ・ターシュのあたりじゃない?」「ラ・ターシュの東西南北どっち側?」だんだん話の内容が怪しくなっていきます。
飲んだことがあるのかどうか、畑はどこにあるのか、情報があいまいなのにはそれなりの理由があります。
ブルゴーニュ地方で高価なワインといえば、絶対的な知名度を持つロマネ・コンティ。
「絶対的」は言い過ぎかもしれませんが、ワインのことを全く知らない栃木県在住の義母も飲んでみたいと言っていました(笑)。
やはり知名度はかなりのもの?
そのロマネ・コンティの腕白な弟といわれているのが、特級畑のラ・ターシュ。
その畑に隣接しているのがレ・ゴーディショです。
複雑な歴史的経緯から、レ・ゴーディショの畑はラ・ターシュに組み込まれてしまいました。
現在、ラ・ターシュの面積は約6ha、東京ドーム(約5ha)よりも若干大きい程度ですが、もともとロマネ・コンティ(約1.8ha)よりも狭い1.5ha弱の畑だったのです。
1860年代のこと、レ・ゴーディショは、ロマネ・コンティとラ・ターシュを所有するドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ社の創業者ジャック・マリー・デュヴォー・ブロシェ氏所有となりました。
19世紀後半から20世紀初頭にかけて、約4.5haあったレ・ゴーディショの畑は「ラ・ターシュ・ロマネ」や「ロマネ・ラ・ターシュ」という名称でも販売されていたらしいのです。
そこでドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ社は歴史的な販売名称を鑑みて、レ・コーディショのブドウもラ・ターシュとして醸造・販売出来るように申請をしました。
ブルゴーニュ地方の畑の考え方はクリマ(Climats)やテロワール(Terroir)で、大げさに言えば1mmたりとも畑の位置を変えることはできないというもの。
ところが、裁判所が下した結果は、「ラ・ターシュとレ・ゴーディショのワインは飲み比べても遜色がないので同じワインとして販売することを認める」というものでした。
このような理由から1932年にラ・ターシュは1.5haから6haへと拡大されたのです。
ただし、ラ・ターシュの畑は「レ・ゴーディショ・ウ・ラ・ターシュ」と「ラ・ターシュ」の2つの区画に分類されています。
前者の「レ・ゴーディショ・ウ・ラ・ターシュ」のウ(ou)は「又は」という意味なのでどちらの名前で販売しても良いという畑。
名前が選べるのであれば、販売価格が高く人気があるラ・ターシュになるのは当然のことでしょう。
約1ha残ったレ・ゴーディショは、ラ・ターシュの最上部、一級畑のオー・マルコンソールと特級畑ラ・ターシュの中腹、特級畑のラ・グランド・リュの下部に三か所バラバラに畑があります。
たったの1ha、それも三か所に分散されているので、ワインは希少なものとなり幻と呼ばれるようになりました。
レ・ゴーディショの話で迷路に迷い込んだ友人と、「もし、ゴハンを食べに行ったお店にレ・ゴーディショがあったら飲んじゃおうか?」と言っていたら、本当にマシャール・ド・グラモンが所有する区画のワインがありました!
3つに分かれている畑のうち、特級畑ラ・グランド・リュの下部に接する部分です。
資料によると0.2328haで初リリースは1993年。
噂をすれば影?
2013年 ヴォーヌ・ロマネ プルミエ・クリュ“レ・ゴーディショ”を鴨料理と一緒に楽しみました。
とてもとても力強い味わいでした。