昭和生まれの私は、昭和、平成、そして令和と3つの元号を経験することができました。
11月22日、天皇陛下が皇后さまとともに即位をご披露する「即位の礼」が執り行われました。
「即位礼正殿の儀」では、陛下の古式装束「黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう)」、皇后さまの十二単(ひとえ)のお姿をテレビで拝見して、まるで平安絵巻を見ているような錯覚に陥りました。
このようにゆったりとした気持ちで「即位の礼」の日を迎えられたのは、3年前に天皇陛下が「生前退位」の意向を公表されたからだと思います。
昭和から平成になった時は、新天皇の即位よりも、昭和天皇崩御という悲しい出来事で日本中が重苦しい雰囲気に包まれていました。
昭和64年(1989年)が明けてすぐのこと、天皇陛下の容体を報じるニュース速報が何度も流れていました。
天皇陛下が崩御して、新しい元号が「平成」と発表された瞬間の緊張感。
そんな張り詰めた空気に比べ、平成から令和は明るく希望に満ち溢れている印象です。
さて、国内外から計2021人が参列した「饗宴の儀」は22日と25日が着席形式、29日と31日は立食形式で開催されました。
天皇即位を祝う晩餐会のメニューは和食、29年前の「即位の礼」と全く同じ内容です。
ワインはフランス・ブルゴーニュ地方の白ワイン コルトン・シャルルマーニュ2011年とボルドー地方の赤ワイン シャトー・マルゴー2007年。
ちなみに前回のワインは、白は今回と同じ銘柄のコルトン・シャルルマーニュ1985年、赤はシャトー・マルゴーと同格付け1級銘柄のシャトー・ラフィット・ロートシルト1978年でした。
ワインはフランス産ですが、料理は日本だから和食なのだと思っていましたが、大正から昭和へ元号が変わる昭和天皇即位時の料理はフランス料理だったそうです。
メニューは、
スッポン清羹(すっぽんのコンソメスープ)、
鱒蒸煮(鱒の料理、外交官風のソースで)、
鶉煮冷(ウズラの冷製、ベルビュー風)、
牛肉焙焼(牛フィレ肉の庭園風)、
凍酒(シャンパンのソルベ)、
蔬菜(セロリのサラダ)、
七面鳥(炙焼七面鳥のロティ、トリュフと)、
温果(デザート)。
昭和天皇が決められた訳ではありませんが、もしかすると洋食がお好きだったから?とふと気になりました。
そういえば、小学館から13年前に発行された『サライ』という雑誌に「素顔の天皇陛下」という特集が組まれていました。今でも大事にとってあるその雑誌をパラパラとめくってみました。
昭和天皇は日本の男性の平均寿命が約76歳といわれた時代に87歳という長き生涯を全うされました。
陛下の長寿の源は食事にあったそうです。
朝食は洋食、昼が和食であれば夕食は洋食とバランスが良い健康的な食事。
メインの魚と肉の比率は7対3くらいで魚が多かったとか。
朝食の時に必ず飲むのは「カルグルト」という乳酸飲料、和食の時には常に麦入りご飯を召し上がり、秋刀魚や鰯、鰺など青魚が大好物。
楽しみにされていたのは秘伝のタレで炊き上げる「お茶漬け鰻」だったそうです。
「何でも食べるのが私の健康法」と陛下自ら語られていましたが、実はお酒が苦手。
国賓を迎えての宮中晩餐会などでも「そういうときはちょっと飲む、ひと口くらいはね、やむを得ないから。
それから新嘗祭の時にも・・・」とご発言されていました。
ところが香淳皇后はお食事の際などにお酒をたしなまれていたとのこと。
ちなみに香淳皇后は酒粕で作る奈良漬けが大のお好みだったそうです。
お酒が苦手な陛下のお膳にも必ず奈良漬けが付けられました。
お酒は飲まないけれど皇后さまのお好きな食べ物だから、という陛下の優しさなのかもしれません。
「即位の礼」から昭和天皇のお話になってしまいましたが、歴史を知り、時代の節目に立ち会えるというのは幸せなことです。
100歳になってもワインの教室で「昔はね、こんなワインが流行っていたのよ」なんて、ワインの歴史を語ってみたいものです。